交通事故が多いのです。
統計の数字は忘れてしまいましたが、明らかに多いとのこと。ジンバブエの話です。
当地には比較的長く滞在しているので、自分で車を運転しているのですが、私の一日の運転距離は40kmくらい。それで、週に1、2回は交通事故現場を通りかかってしまうくらいの頻度です。5人、10人が死傷する交通事故のニュースも毎週のように新聞に載ります。
交通事故の原因には、「道路や信号の整備状況が悪い」、「歩行者の安全意識が低い」、「整備不良の車両が少なくない」といったこともあるんですが、一番の理由はコンビと言われる小型乗り合いバスの運転マナーの悪さです。
客を拾うための急停止、交差点内など不用意な場所での停車、無謀な追い越しやUターン、右折車線からの直進や直進車線からの右折(ジンバブエは日本と同じで車は左側通行です)、二重駐車や蛇行運転など、ヒドい運転が多いのです。
このコンビ、元は日本で走っていた8〜12人乗りのバンの中古車のシートを付け替えて、ギュウギュウ詰めで20人位乗れるようにしたもの。なので、交通事故を起こすと死傷者の数も多くなります。
政府や警察も交通事故が多いことを問題と意識はしているようで、対策を打ってはいるんですが、その対策がまた的外れが多くてですね。「すべての車は消火器を搭載しなくてはいけない」、「車の前部バンパーの左右には白の反射シール、後部バンパーの左右には赤の反射シールを貼らなくてはならない」「コンビは営業登録をしなくてはいけない」・・・。結局、警察があちこちで検問所を作って、そこで車を停めてドライバーに難癖つけて小銭を巻き上げる機会を増やすだけになっています。それどころか、巻き上げた小銭が警察官の懐に入るだけでなく、欧米諸国では極めて不人気なムガベ大統領与党の活動資金になっているという話もあったり、果ては検問所自体が交通事故を誘発している実態も聞かれます。
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しかし、なぜコンビが関わる交通事故が多いのか。なぜ、コンビが無謀運転をするのか。
実はこのコンビの運営形態に問題があると思うのです。コンビに使うバスはそれなりのお金がないと買えないので、資金のある人が買って、運転免許を持っている失業者に貸して営業させているケースが多いらしく、その元締めにはインド人、パキスタン人が目立つとか。
バスをたとえば1日100ドルとか、月2000ドルとかで借りて、コンビの営業をするわけですが、借りた方としては元締めに払う金額は決まっているので、出来るだけたくさん客を乗せて、できるだけたくさん走った方が稼げることになります。それで、多少の無理を押してでも朝早くから夜遅くまで、客をギュウギュウに詰めて無茶な疾走を続け、しばしば事故を起こす。
そういう構造的な問題には手を付けず、当局は的外れな規制やコンビのドライバーの締め付けで対策を打った気になっています。道路や信号の再整備は時間もお金もかかるので一朝一夕にはできないとは思いますけど、たとえばコンビの運行は認可されたバス会社にしか認めないことにして、運転手はバス会社の社員でなくてはいけない、というルールにするだけでも無謀運転は随分減るんじゃないかと思うんですよね。小金のあるやつがバスを買って、街をブラブラしている若造にコンビを営業させるのが有利な資金運用になっているという状況は良くないでしょう。
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と、ジンバブエの当局の、実態や構造を見ない、その場限りの気分や思いつきに過ぎない交通事故対策を批判的に書きましたけど、最近、似たような話はジンバブエじゃなくても聞きますねぇ。
問題が起きる構造を考えず、問題を起こした人を叩いて溜飲を下げ、対策した気になる。最近、我が日本国でも多い話じゃないですか?
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